茂木外務大臣は会見で中国側が不正確な情報を繰り返し流布していることについて、毅然とした対応を取ることを表明するとともに、日本側としても情報発信を強化し、中国の「認知戦」に対抗する考えを示した。

茂木外相、中国の情報発信への対策を表明

茂木外務大臣は記者会見で、在日中国大使館が「旧敵国条項」がいまだ有効であるかのように発信していることについて、事実に反するとの認識を示し、外務省としてSNS等で正しい事実関係を発信し対処しているとして、中国側の情報操作ともいえる情報の流布に対して毅然とした態度を取るとの立場を明確にしており、今後も先述の「旧敵国条項」などの事実に反する主張には客観的事実に基づいて適切に反論し、日本の立場を説明していく方針であるとした。なお、茂木大臣の言及した旧敵国条項は当の中国政府が「死文化している」とする解釈に賛成票を投じており、今回の在日中国大使館の発信は後述の認知戦の文脈で捉えるならば、情報の正誤に関係なく、中国側に有利な情報を大量に流布する作戦の一環である可能性がある。

情報発信の強化

また茂木大臣は、中国に限らず「認知戦」「宣伝戦」とも言われる情報発信の中で、日本に不利な認識が広がらないよう、戦略的コミュニケーションやパブリック・ディプロマシーを強化する方針を発表した。具体的には各国メディア・有識者への積極的な情報提供やSNSの活用を進めるとともに、日本の文化や魅力を発信し、「ジャパン・フレンズ」と呼べる日本に好意的な層の拡大にも力を入れていく考えを示した。これはいわゆるソフト・パワーの強化ともとれる考え方であるが、かつての米国によるフルブライト奨学金などのように、広報力の強化のみならず、人材育成を通じた親日世論の醸成を図る必要があるだろう。

対日世論調査

外務省による令和六年の対日世論調査では、いずれも日本に対しての印象には好意的なものが多く、特に欧州五か国の市民に対する調査では、日本は米国に次ぐパートナーであるとの世論調査結果がある。しかしながら、中東地域では中国が最も重要なパートナーであるとの考えを持つ世論が醸成されていることが同年の調査で判明しており、茂木大臣の「ジャパン・フレンズ」構想については今後より一層の政府による取り組みが重視されるであろう。

縮小する都市

2015年から2025年の間に、世界中で3,000以上の都市で人口減少が発生した。その3分の1以上は中国に位置し、17%はインドに位置している。これは極めて興味深い現象である。少なくとも、インドに関しては人口増加のフェーズにあり、すなわち極めて急激な大都市への流出が発生していると考えられる。なお、このことはインドにおいて、大卒者の就職難が発生していること、すなわち都市部における雇用市場が極めて強い買い手市場の傾向を示していることとも関連している可能性が高い。

認知戦への対策

茂木大臣が言及した「認知戦」「宣伝戦」はロシアのウクライナ侵攻や、参議院選挙でも特定の国家による情報の流布が観測されているほか、モルドバやルーマニアなどの東欧諸国における選挙でも特定の候補に有利、もしくは不利となる情報がオンラインプラットフォーム上で流布されることが相次いでおり、日本でもこれまでは言語の壁によってある程度そういった情報の流布が阻まれていたのが、生成AIの普及によって言語の垣根を超えた真偽の疑わしい情報の大量流布が多発することが懸念されている。

参考

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaikenit_000001_00109.html

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100812730.pdf

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100812737.pdf

外務省 (MOFA), CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=177487649による