西アフリカの小国、ギニアビサウにおいて、大統領選挙の結果発表前後に軍の将校グループが国営テレビに出演し、権力の掌握と「秩序回復のための高等軍事司令部」の設置を宣言した。

クーデターの発生

日曜日に行われた大統領選挙の結果発表(木曜日予定)を控えたタイミングで発生した。ウマロ・シソコ・エムバロ大統領(53歳)は拘束され、大統領自身も電話取材に対し「退陣させられた(deposed)」と認めている。クーデターの直前にはエムバロ大統領と、対立候補のフェルナンド・ディアス氏の双方が勝利を主張している状況であった。なお、エムバロ大統領はベラルーシなどの権威主義国家と関係を深めており、大統領就任時にも対立候補から選挙結果について提訴されているほか、2022年にはクーデター未遂が発生している。

軍側の主張と行動

国営放送にて会見した軍はクーデターの理由として「著名な麻薬王の支援を受けた政治家たちによる、国家を不安定にする陰謀」を阻止するためとしている。軍は秩序維持を理由に選挙プロセスの停止、国境の閉鎖および夜間外出禁止令を発令した。政府筋によると、大統領以外にも多くの重要人物が拘束されている。大統領の最大のライバル候補であるフェルナンド・ディアス氏、元首相のドミンゴス・ペレイラ氏、そしてさらにはビアグ・ナ・ンタン軍参謀総長およびその副官までもが拘束されたとされる。

ギニアビサウ共和国とは

面積は日本の九州とほぼ同じであり、人口は約215万人という小国である。GDPは19.66億米ドルであり、一人当たりGNIは900米ドルと、経済的には極めて貧しい国家である。なお、経済成長率は4.3%と比較的高いものの、物価上昇率は7.0%と経済成長率を上回っているため、国民生活は極めて苦しいとされる。なお、通貨はCFAフランを使用しており、他の西アフリカ諸国と共にフランスの影響が強い。貿易相手国には中国や旧宗主国のポルトガルなどが名を連ねている。内政状況は混迷の色が強く、独立後には度重なるクーデターを経験しており政情は不安定である。2023年12月には銃撃事件を発端とした政治的混乱が発生し、大統領が再度議会を解散する事態となっている。産業も農業以外は乏しく、世界最貧国のひとつとされている。

日本とギニアビサウ

日本とギニアビサウは経済協力でつながりを有しており、無償資金協力は累積で約188.49億円、技術協力は累積で約10.15億円という額をギニアビサウに投入している。なお、主要な援助国はポルトガル、米国、日本、スペインなどである。要人往来は比較的盛んであり、2019年8月にゴメス首相らがTICAD7(アフリカ開発会議)のため訪日し、2024年8月にはピント・ペレイラ外務相がTICAD閣僚会合のため訪日している。なお、在ギニアビサウ日本大使館も積極的に活動しており、クーデターの2日前にも「ギニアビサウ国ブラ市3集落ソーラーポンプ設備及び農業機材整備計画」を発表しており、数千万円規模の寄付を行っている。

国内外の反応

旧宗主国であるポルトガルは現時点では公的声明を発表しておらず、状況の把握に努めているものと思われる。なお、大統領府やギニアビサウ政府も特段の声明を発していないばかりか、2021年ごろから大統領府は情報更新を停止しており、政府機関の機能についても疑念が呈されかねない状況が続いていた。唯一、国営放送はFacebookを通じて活動を続けており、先述の軍の会見もFacebook上に動画がアップロードされている。このことから、ギニアビサウ国内の主要メディアと官庁は軍の制圧下にあるか、もしくは無力化されたものと思われる。

参考

https://www.bbc.com/news/articles/c0edww3qgq2o

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/guinea_b/data.html#section1

https://portaldiplomatico.mne.gov.pt/en/

https://www.presidencia.gw/en

https://www.cnn.co.jp/world/35182938.html

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