教皇レオ14世は、初の外遊として木曜朝にローマを出発し、平和のメッセージを掲げ、ニカイア公会議1700周年記念行事への参加やエルドアン大統領との会談を行うため、また経済危機や紛争に苦しむ人々への連帯を示すためにトルコとレバノンの両国を歴訪する予定である。

苦境にあるトルコとレバノン

トルコでは少数派のキリスト教徒がテロ攻撃やアヤソフィアのモスク化といった宗教的・社会的圧力に直面している。アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、特にエルドアン大統領の就任以後、トルコ国内の人権状況が急速に悪化しているとし、国際社会の圧力が必要であるとの見解を示している。しかしながら、NATO加盟国にしてロシアと黒海を隔てて対峙するトルコは独自の立場を欧州で確保しており、それゆえ。欧州諸国の介入による人権状況の改善には多くの困難があると予想されている。一方、レバノンでは2019年の経済崩壊に港湾爆発事故やイスラエルとの軍事衝突が追い打ちをかけ、困窮した市民が安定を求めて国外へ流出を余儀なくされる深刻な状況にある。つい先日もレバノンの首都、ベイルートにてイスラエル軍がヒズボラ幹部を殺害しており、昨年の停戦で一度は落ち着きを見せていた国内情勢が再び不安定化することになれば、経済的苦境がさらに長期化することになりかねない。

なぜ初の外遊にトルコとレバノンを選んだのか

昨年に逝去したフランシスコ教皇とは異なり、レオ14世は保守派とリベラル派の双方に配慮を重ねるバランス型として知られる一方、貧困者などの弱者への救済を重視する点でフランシスコ教皇との共通点も多い。就任後間もなく、まだ政治的基盤の弱いレオ14世にとっては、少数派のキリスト教徒が社会的に苦境にあるトルコを訪問することで、キリスト教徒の保護をアピールし、保守派に配慮するとともに、経済的な苦境にあるレバノンを訪問することで、自身の持ち味である弱者を重視する姿勢を示し、また、イスラム教国とも接触を持ち続けることで、リベラル派へも一定の配慮を示すことができるという狙いがあるのだろう。

両国にとってこの訪問はどのような意味を持つのか

まず、トルコに関しては、キリスト教徒への社会的な圧力が強まっていることが以前より指摘されていたが、今回のレオ14世の訪問は、その動きに釘を刺すものとも受け止められるだろう。しかし、エルドアン大統領の支持基盤には原理主義的なイスラム教徒も多いため、明確にこれまでの路線を変更し、宗教的多様性を確保する方向に向かうことは難しいだろう。しかしながら、キリスト教国とも太い関係を有するトルコの大統領として、この訪問とレオ14世の訪問中の発言は重要な意味を持つものとなるだろう。次にレバノンに関しては、2022年のベイルート港の爆発事故以来、国際的な関心が薄れていた自国の窮状を改めて世界に訴え、援助の強化を求める機会となるだろう。このことは貧困者の救済に長年尽力してきたレオ14世の価値観とも合致する部分が多く、レオ14世もレバノンへの援助について何らかの形で発言することが予想される。

参考

https://www.catholicnewsagency.com/news/268119/ pope-leo-xiv-to-focus-on-christian-unity-relations-with-islam-in-turkey-and-lebanon

https://www.bbc.com/news/articles/cy5g3076lqzo

https://www.amnesty.org/en/location/europe-and-central-asia/ western-central-and-south-eastern-europe/turkiye/

https://www.bbc.com/news/world-europe-13746679

Edgar Beltrán, The Pillar, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=165153532による