国際的な信用格付け大手のS&Pグローバルは、ナイジェリアの対外収支の改善と財政改革の進展を評価し、同国の格付けを据え置きつつ、同国の経済の見通しを今後の格上げの可能性を示す「ポジティブ」へと上方修正した。
成長を続けるナイジェリア経済
世界銀行の「ナイジェリア開発アップデート(2025年10月)」によると、同国は構造改革の進展により2025年上半期のGDP成長率が3.9%を記録し外貨準備高も420億ドルを突破するなどマクロ経済の安定化が進んでいる。更に、2億3000万人という豊富な人口と非常に豊富な若年層を有する人口構造を強みとして、経済規模は年々成長を続けている。この圧倒的な人口規模に比べて、現行の経済規模はGDPにして10兆円規模と、極めて大きなポテンシャルを秘めていることから、産業開発に成功すれば、同国の経済はアフリカ地域で随一の規模・内容を有するようになるであろう。
ナイジェリア経済の課題
同国の課題として、貧困率は依然として46%を超え、2019年比で5倍に達した食料価格の高騰が国民生活を圧迫していることから、インフレ抑制と社会保護の拡充が急務であると警鐘が鳴らされている。また、同国の2025年のインフレ率は依然として約25%という高水準が予測されている。また、石油資源への経済構造の依存が課題とされ、政府は経済構造の多角化に向けて様々な改革を行っている。
日本とナイジェリア
ナイジェリアにはすでに50社以上の日本企業が進出しており、今後の経済成長への期待感と、アフリカでは比較的に安定した政情と、地域随一の経済規模を背景に、日本企業による経済活動が盛んにおこなわれている。2024年の貿易額は1500億円に達しており、今後も拡大が見込まれている。在日ナイジェリア人の人数も5000人近くを数えており、JICAなどによる人的交流が積極的に行われていることから、日本政府も累計で1700億円規模の援助を行うなど、ナイジェリアにはアフリカ諸国の中でもとりわけ多くのリソースを割いている。中国によるアフリカへの進出が盛んにおこなわれる中で、日本にとってナイジェリアとの関係は今後もその戦略的な重要度を増していくであろう。政治的な面だけでなく、石油資源の調達先の一つとしての可能性も秘めているナイジェリアは、日本のサプライチェーンの強靭化戦略においても一定の役割を果たす可能性がある。
参考
https://www.spglobal.com/marketintelligence/en/mi/research-analysis/ upgrade-of-nigerian-sovereign-risk-rating.html
https://www.worldbank.org/en/country/nigeria/overview
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nigeria/data.html