パキスタンとアフガニスタン(タリバン政権)の間で再び国境紛争が勃発し、脆弱な停戦合意が崩れる事態となっている。金曜日の夜から始まった戦闘は死傷者を出す規模に拡大しており、今後の両国関係および人道支援への影響が懸念されている。
衝突の経緯と被害状況
金曜日の夜22:30頃、国境沿いのアフガニスタンの都市スピンボルダック周辺で戦闘が開始された。カンダハルの病院報告等の情報によると、アフガニスタン側で死者4名、負傷者4名、パキスタン側でも3名が負傷したと伝えられている。
現地からは重火器や迫撃砲が使用されたとの報告もあり、多くの住民が徒歩や車で避難を余儀なくされている。詳細な確認情報は待たれるものの、これらの報告が事実であれば、パキスタンとアフガニスタンの国境部隊が偶発的か意図的かに関わらず、部隊としての攻撃命令を受けている可能性が示唆される。小火器のみの応酬であれば現場兵士の偶発的な衝突とも考えられるが、重火器の使用は一定以上の階級からの命令があった可能性が高く、今後の和平交渉にも極めて大きな影響を与えるだろう。
パキスタン側の強硬姿勢と国境管理
両国外務省から公式声明は未だ発表されていないが、パキスタン外務省による会見では、人道支援のために例外的に国境を開放するとの発表がなされた。しかし同時に、報道官は「アフガニスタン側から、暴力、暴力分子、テロリストがパキスタンに侵入し、彼らが犯した犯罪を犯さないという確固たる保証が得られるまで、閉鎖状態が続くことになる」と述べている。
また、「国境開放が安全保障上の脅威となり、相手側からの発砲によって国境警備隊員や交易拠点が殺害された場合、自衛のための国境閉鎖は国際法上合法であり、認められている。これは自衛権に基づく行使である」とも発言しており、パキスタン側がアフガニスタンに対し極めて強い警戒感を抱いていることが浮き彫りとなった。この姿勢は和平合意の進展や国境封鎖の長期化に直結するため、今後パキスタン側の国境管理はさらに厳格化し、人道支援物資の搬入も困難化することは間違いないと見られる。
双方の主張と背景にある対立
双方が「相手が先に4時間にわたる戦闘を開始した」と互いに非難し合っている。パキスタン側はタリバンによる「いわれのない発砲」に対し、領土保全と国民の安全のために応戦したと主張。対するタリバン側は、パキスタンが「再び攻撃を開始」し民家が攻撃されたため、自衛のために反撃したと主張している。
今回の衝突は、カタールとトルコの仲介により停戦合意が結ばれてから2ヶ月も経たない中で発生した。対立の根源には、パキスタン政府が長年非難している「タリバン政権がパキスタンを攻撃する武装勢力(パキスタン・タリバン運動など)を匿っている」という問題がある。過去1年でパキスタン軍への攻撃は600件以上にのぼるが、タリバン側はこれを否定し、パキスタンの治安維持の失敗を転嫁していると反論している。
経済的影響も甚大である。以前のパキスタンはアフガニスタンの貿易相手国として極めて大きな比重を持っており、国境閉鎖はアフガニスタン経済に深刻な打撃を与えている。アフガニスタン政府としては一刻も早く国境閉鎖を解除したい意図があるが、今回の衝突は長引くアフガニスタン経済の低迷をさらに深刻化させるだろう。
参考
Ministry of Foreign Affairs Pakistan
Ministry of Foreign Affairs Afghanistan