要約:ロシアでの民間職と偽り、ケニアの若者をウクライナ戦線へ動員する欺瞞的実態
複数の海外メディアはケニアの若者たちが警備員や運転手といった民間職の募集と偽ってロシアへ勧誘され、実際には兵士としてウクライナでの戦闘に投入されている実態を報じた。

デビッド・クロバ氏の悲劇と組織的欺瞞

ナイロビの貧困地区出身のデビッド・クロバ氏(22歳)は、ロシアでの警備員の仕事と到着時の高額手当を提示され渡航した。母親は現地の情勢を危惧し反対したが、彼は家族の生活を支えるため出発したのである。

しかし到着後、業務内容は軍務へと変更され、わずか2週間の訓練を経てウクライナの前線へ投入された。10月4日に「戦闘に出る」との連絡を最後に消息を絶ち、仲介業者からは「死亡したとみられる」と伝えられたものの、遺体の確認や公式な死亡通知はなされていない。

クロバ氏の詳細な契約金額は明らかになっていないものの、ケニアの一人当たりGDPは2,100米ドル程度であり、ロシア側からすればその労働力は極めて魅力的であると考えられる。

同様の事例は他にも確認されており、運転手として募集された若者が前線に送られ負傷している。多くの若者が契約内容を十分に理解せぬまま署名させられていたのが実情である。ケニア外相によれば、約200人のケニア人がロシア側で戦闘に参加しているという。更にはウクライナ側もロシア側で従軍したケニア国民を拘束しているとの情報があり、相当数のケニア国民がロシア側の戦闘員として実戦投入されていることは明確である。

政府の対応と外交的障壁

ケニア政府は悪質な仲介業者の調査や免許停止に乗り出した。しかし、契約自体は形式上「自発的」に署名されたものであるため、法的・外交的な救済は難航している。残された家族は情報も得られず、遺体の送還も叶わぬまま、深い悲嘆の中に置かれている。

なお、ケニア政府はロシアとの関係を特にその経済及び国際政治の文脈で重視している。2023年にはウクライナ侵攻の最中であり、ロシアが世界中から強く非難されていたにも関わらず、ロシアとの首脳会談を実施した。貿易関係の強化や、国連安保理常任理事国にアフリカからの新メンバーを加える件についてロシアの支援が重要であるとの声明も発表している。このことから、ケニア政府がロシアにおいて戦闘に「自発的に」参加しているとされる国民に対し、有効な手立てを打つことは困難である可能性が高い。

経済的困窮が招く危険な選択

ケニア経済はロシアによるウクライナ侵攻の影響で深刻な打撃を受けている。研究によると、トウモロコシ、小麦、植物油、肥料、化石燃料という主要5品目の輸入価格高騰が、GDPを2.8%、家計消費を4.4%押し下げるなど経済活動に負の影響を与えたことが明らかになっている。

さらに専門家の分析によると、GDP低下と食料インフレの最大の要因は肥料価格の上昇であり、投資や輸入の減少は主に燃料価格の高騰によって引き起こされた。特に農村部は都市部よりも深刻な食料価格の上昇に直面した。

政府による燃料および肥料への補助金は経済への悪影響を緩和する効果を示したものの、歳入を約8%減少させるなど多大な財政コストを伴う。長期的には輸入元の多角化や地域内貿易の強化、国内農業生産性の向上が不可欠であると結論付けられている。これは即ち、これまでの食料・肥料輸出国であった西欧諸国ではなく、ロシアやインドなど近年伸長している新たな極に接近するモチベーションとなっていると考えられる。

参考