12月6日、沖縄本島南東の公海上空において、中国海軍の空母「遼寧」から発艦したJ-15戦闘機が、対領空侵犯措置を実施していた航空自衛隊のF-15戦闘機に対し、16時台と18時台の2度にわたり断続的にレーダー照射を行う事案が発生した。
自衛隊機および隊員に被害はなかったものの、政府はこれを航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為と断定し、翌7日午後、船越健裕外務事務次官が呉江浩駐日中国大使を外務省に召致した上で、極めて遺憾であるとして強く抗議し、再発防止を厳重に申し入れた。なお、小泉進次郎防衛大臣は会見で中国側の危険な行動について懸念を表明した。
J-15「飛鮫」:その能力と出自
それではこのJ-15戦闘機とはどのような機体であり、どの程度の脅威となりうるであろうか。
中国の瀋陽飛機工業集団がウクライナから入手した旧ソ連のSu-33試作機を基に開発したJ-15(通称「飛鮫」)は、2013年の就役以来、空母「遼寧」や「山東」の中核を担う第4.5世代艦載多用途戦闘機である。近年ではカタパルト発進に対応したJ-15Tや電子戦型のJ-15Dといった改良型も実戦配備されるなど、後継の第5世代機J-35が登場するまでの主力機として運用が継続されている。
挑発の背景と使用された機体の可能性
今回のレーダー照射事案におけるJ-15戦闘機の詳細な型式は明らかにされていないものの、日本側に対する警告行動として空母遼寧が演習を実施していたとの見方が強いことから、改良型の先述の二機種のいずれかがレーダー照射を実施した可能性がある。
なお、開発のベースとなったSu-33は旧ソ連がSu-27を母体に開発したカナード翼や主翼折りたたみ機構により艦上運用能力を獲得したロシア海軍の艦載制空戦闘機であり、ソ連崩壊の影響で生産数は少数にとどまり後継のMiG-29Kへの移行が進む一方で、その技術は中国のJ-15開発の基礎となった。本機自体も近代化改修を経てシリアでの実戦投入がなされるなど、実戦経験もある戦闘機として一定の地位を占めている。
厳しさを増す安全保障環境
J-15戦闘機そのものの実戦経験については確認されていないものの、台湾海峡周辺での示威行動などが確認されており、常に最前線で活動していることから、その信頼性や実績については一定以上の評価を与えることができるであろう。
また、中国は空母遼寧や山東の相次ぐ就役にも代表されるように、アジア地域における軍事的プレゼンスを高めており、その実力は正確な計測が難しいものの、一部では極東地域に限定すれば米国の軍事力を上回るとの指摘もなされている。今回の事案は、日本にとっての安全保障環境の厳しさが今後も変わらないか、むしろ悪化する可能性すらあることを示唆している。
参考
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_03067.html