トランプ政権はベネズエラ由来の犯罪組織や麻薬密売に対して強硬な姿勢を強めており、2025年3月24日にはマドゥロ政権および犯罪組織「トレン・デ・アラグア」を米国の安全保障に対する脅威と認定する大統領令を発令した。同令では、前政権の国境政策の不備やマドゥロ政権による犯罪組織への支援を指摘しつつ、ベネズエラ産石油を輸入する国からの輸入品に対して25%の関税を課すという強力な経済制裁措置を講じている。
カリブ海での軍事行動を巡る疑惑と矛盾
しかし、こうした強硬路線の裏で、9月初旬にカリブ海で実施された麻薬密輸船とされる船舶への軍事攻撃を巡っては、政権側の説明に数多くの矛盾が生じ、国際法への違反の疑いも含めた深刻な論争へと発展している。当初、ピート・ヘグセス国防長官は作戦の精密さを誇示し、麻薬は米国へ向けられたものだと主張していたが、後に軍当局者は船が欧州へ向かうルート上(スリナム行き)にあった可能性が高いと議会に報告しており、攻撃の前提条件が揺らいでいる。
なお、公海上での軍事行動には国際法の観点からも懸念が提起されており、そもそも麻薬を運搬していたのかも十分な確認がなされていないとの指摘もある。
揺らぐ政権のナラティブ
さらに、生存者を殺害したとされる「2回目の攻撃」について、政権は当初報道を「捏造」として全面的に否定していたが、後にホワイトハウスは事実を認め、トランプ大統領も当初の「2回目の攻撃は望まなかった」という示唆から、攻撃決定を支持する姿勢へと態度を一変させた。ヘグセス長官の関与についても、当初の「ライブで見ていた」という発言から、生存者への対応を協議する重要な意思決定の場には不在だったという説明へと修正がなされている。また、トランプ氏による映像公開の約束も撤回されるなど、政権のナラティブは一貫性を欠いたまま変遷を続けている。
ベネズエラ情勢への影響
なお、ベネズエラ経済は米国による制裁だけでなく、前政権の失策によっても多大なダメージを受けたとされており、議会もその機能をほとんど停止し、政権の意向を追認するのみの機関になっており、政治・経済の両面で崩壊の一途を辿っている。このような状況下で、米国による外圧が体制の変革につながる見込みは極めて低いとされる。
参考
https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/03/imposing-tariffs-on-countries-importing-venezuelan-oil/
https://edition.cnn.com/2025/12/08/politics/boat-strikes-venezuela-trump-administration
Palácio do Planalto from Brasilia, Brasil - 29.05.2023 - Visita Oficial do Presidente da República Bolivariana da Venezuela, Nicolás Maduro, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=166331829による