本研究「外国人接触と外国人意識」は、JGSS-2003のデータを用い、日本社会において外国人とのどのような接触経験が日本人の偏見・排外意識(外国人増加への反対)を低減させるかを、「接触仮説」の再検討を通じて考察したものである。この研究は2006年時点のものであり、現在のようなソーシャルメディアが極めて強い影響を持っている状況にそのまま適用することは難しいと思われるものの、あくまで一般的な傾向として、日本における外国籍住民との共生を考える上で重要な示唆を与えてくれるだろう。

「気楽な接触」がもたらす排外意識の抑制効果

欧米の先行研究では、「対等な地位」や「共同作業」などの特定条件を満たす接触が偏見低減に有効とされるが、本稿ではこれらに加え、日本社会でより一般的である「あいさつ」程度の日常的・インフォーマルな接触の効果も分析した。

分析の結果、接触経験が全くない層と比較して、特定条件を満たす「受動的接触」や個人の選択による「能動的接触」だけでなく、単にあいさつを交わす程度の接触や、地域で外国人を見かけるといった「接触機会のみ」の場合であっても、排外意識を有意に低減させることが明らかになった。

すなわち、街で外国籍者とすれ違うといった場合でも、排外意識を抑制する効果を持つということである。これは、外国人との接触自体が希少な日本社会においては、利害を伴わない「気楽な」接触、例えば職場での外国籍者との交流ほどの接触でなくとも、外国人への否定的ステレオタイプを改善する情報を得る媒介として機能し得ることを示唆している。一方で、都道府県レベルの外国人人口比率が高いことは排外意識を高める要因となるが、個人レベルでの接触機会は逆に排外意識を低減させるという対照的な結果も確認されており、地域特性と個人の接触経験の効果は区別して捉える必要があると結論付けられている。

インターネット空間の「接触」と現実の乖離

本研究は20年前のものであり、その結果をそのまま現代に適用するべきではないものの、欧米に比べれば日本における外国籍者の絶対数と割合はともに非常な低位にある。むろん、20年前と比べても大きく増大してはいるものの、その増加はあくまで都市部に限られており、地方に関しては未だに20年前と大差のない状況が続いている。

インターネット上では外国籍者に対する厳しい見方が散見されるが、インターネット上の言説と現実世界の言説は必ずしもリンクしてはおらず、インターネットの持つ匿名性を考えると、排外主義的な言説の発信者の正確なプロフィールを特定することは極めて困難である。それゆえ、本研究の傾向を適用するならば、そういった排外主義的な言説の発信者が外国籍者と接触を持っていない、もしくは持っていたとしても極めて限定的な接触にとどまっている可能性は否定できないのである。

「隣人」としての共生に向けて

本研究はあくまで現実世界における接触に焦点を当てているものの、現代で顕著なインターネットの影響についてはさらに詳細な検討が必要とされるだろう。つまり、街で外国籍者とすれ違うのと、インターネット上において外国籍者に関する否定的なニュースを目にすることではどのような差が生じるのかということである。むしろ現代の日本では後者のタイプの「接触」の方が多いという人もいるだろう。

しかし、外国籍者も一人の人間であり、隣人として共生する必要があるのであり、インターネット上ではその前提が忘れられ「外国人」としての印象だけが独り歩きしてる印象を受けるのも事実である。本研究でも確認されたように、実際に外国籍者と関わる機会を増やすことこそが政府には求められるのではないだろうか。

参考