12月20日午前、都内ホテルにおいて、高市早苗内閣総理大臣を議長とし、中央アジア5か国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)の大統領が一堂に会する「中央アジア+日本」対話(CA+JAD)首脳会合が初めて開催された。
21年の歩みと重要性の高まり
冒頭、高市総理は、2004年に日本が世界に先駆けて立ち上げた同対話枠組みが発足から21年を迎えたことを歓迎するとともに、昨今の国際情勢の変化を踏まえ、地政学的な結節点であり豊富な資源を有する中央アジアの重要性が国際社会において一層高まっている旨を強調した。これに対し各国首脳からは、初の首脳会合開催に向けた日本の尽力への謝意に加え、長年にわたり日本が同地域の統合と協力促進に果たしてきた役割を高く評価する発言が相次いだ。
新イニシアティブと戦略的意図
メイン・セッションにおいて、高市総理は日本と中央アジアの互恵関係を強化し、同地域の産業高度化を後押しするための「CA+JAD(カジャッド)東京イニシアティブ」の立ち上げを宣言した。本イニシアティブでは、「グリーン・強靱化」「コネクティビティ」「人づくり」の3つを重点協力分野として特定している。具体的には、重要鉱物サプライチェーンの強靱化や気候変動対策、カスピ海ルートの物流円滑化、日本・中央アジアAI協力パートナーシップの設立、さらには法務大臣会合の開催などが盛り込まれた。あわせて、今後5年間で総額3兆円規模のビジネス・プロジェクトを組成するという野心的な目標も設定された。
中央アジアの各国は鉱業・農業・牧畜業などの資源産業及び一次産業に依存する経済構造が課題であり、これまでも国際的な資源価格の乱高下によって不安定な経済運営を余儀なくされてきただけに、高市総理が打ち出した産業の多角化にも繋がりうる日本からの協力は有意義な協力として受け入れやすいものであろう。また、人材育成やコネクティビティなど、広義のインフラ開発に関係する文言が多く盛り込まれていることからは、中国の一帯一路に対するけん制の意図も透けて見える。中央アジア各国としても、広大な国土のインフラ開発には外部からの支援が必須であり、この点では経済投資を加速させたい日本側にとっても経済活動の障壁の除去と中国の影響力の減殺という目的を達成することができ、両者の利害が一致する分野ゆえに大々的に盛り込まれているものと考えられる。
「東京宣言」に見る外交姿勢の変化
中央アジア各国首脳は、この新たなイニシアティブを歓迎し、資源・エネルギー開発や防災、物流連結性、人材育成といった分野における日本との連携強化に強い意欲を示した。会合の総括として、首脳共同宣言である「東京宣言」が採択されたほか、本会合に合わせて官民計150件以上の文書が署名・披露されるなど、日本と中央アジアの新たな協力関係を象徴する歴史的な会合となった。
今後もこの日本と中央アジアの協力関係は強化されていくものと思われるが、その反面、宣言には政治的な文言、特に日本が重視する民主主義と自由に関する記述は控えめであり、経済協力がその骨子となっている。これには権威主義的な体制を有する各国への配慮がにじんでおり、日本がこれまで前面に打ち出して行ってきたような民主主義と自由主義を中心とした価値観外交からは一部後退が見られる点には留意が必要である。
引用・参考文献
本記事に掲載された写真及び情報は、以下より引用・参照したものである。
「中央アジア+日本」対話・首脳会合の開催(結果)|外務省