2025年12月19日、午前11時40分から東京において、茂木敏充外務大臣と訪日中のジュディス・コリンズ・ニュージーランド国防大臣との間で、「日本国の自衛隊とニュージーランド国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とニュージーランド政府との間の協定」(日・ニュージーランドACSA)および「情報の保護に関する日本国政府とニュージーランド政府との間の協定」(日・ニュージーランド情報保護協定)への署名が行われた。
ACSAの締結と自衛隊の活動拡大
日・ニュージーランドACSAは、後方支援の分野における物品または役務の相互提供に関する枠組みを設けることで、自衛隊とニュージーランド国防軍の緊密な協力を促進することを目的とするものである。本協定の締結により、自衛隊とニュージーランド軍が実施する活動においてそれぞれの役割を一層効率的に果たすことが可能となり、国際社会における平和および安全への積極的な寄与がいっそう期待されることになるだろう。
同協定の適用対象となる活動には、共同訓練、国連平和維持活動(PKO)、人道的な国際救援活動、大規模災害への対処、および外国での緊急事態における自国民等の退去措置などが含まれる。提供される物品または役務の区分は、食料、水、燃料、輸送、通信業務、衛生業務、修理・整備業務、空港・港湾業務、および弾薬など多岐にわたるが、武器の提供についてはこの協定の対象外であると明記されている。
また、提供された物品の決済に関しては、原則として同種・同等の物品による返還が求められるが、それが困難な場合は通貨による償還が行われる規定となっている。本協定は発効後10年間有効であり、特段の通告がない限り自動的に更新される。これは自衛隊がオセアニア地域で活動を行ううえでその活動を円滑にするものであると考えられるとともに、昨今の台湾海峡周辺において軍事的プレゼンスを高める中国に対するけん制の意図も少なからずあるであろう。
変化する太平洋地域の安全保障環境
オーストラリア周辺海域を中国海軍の船舶が長時間にわたって航行したことはまだ記憶に新しいが、オーストラリアの周辺海域での中国海軍の活動は即ちニュージーランドにとっても安全保障上の脅威であり、日本との安全保障上の協力はニュージーランドにとっても喫緊の課題であると言えるであろう。
情報共有の強化と「自由で開かれたインド太平洋」
一方、同時に署名された日・ニュージーランド情報保護協定は、両国政府間で相互に提供される国家安全保障上の秘密情報を、受領国が適切に保護するための措置等を定めるものである。これにより、両国間での情報交換が一層促進されることが期待される。
日本国はいわゆるファイブアイズの中核メンバーではないものの、その構成国の多くと緊密な安全保障上の一致する利害関係を持っている。特にニュージーランドは太平洋地域での情報収集をファイブアイズメンバーとしては行っており、日本としても盛んに太平洋各国へアプローチを行う中国を念頭に、ニュージーランドとの情報面での協力は急務であることから、日本側にとって大きな戦略的意味を持つ協定であると言えるだろう。
署名式の後に行われた両大臣による会談では、安全保障分野における両国の協力、経済安全保障、地域情勢や米国のこの地域への関与の重要性等について意見交換がなされた。その中で、「自由で開かれたインド太平洋」の担い手である両国が、安全保障・防衛協力を一層強化していくことの重要性が改めて確認された。