12月17日午後2時30分から約15分間、大西洋平外務大臣政務官は、ナジブ・エルジ駐日シリア国大使館臨時代理大使の表敬を受けた。冒頭、大西政務官は国際社会と連携しつつ、シリア政府と国民による包摂的、平和的かつ安定した移行を支えていく旨を表明した。これに対しエルジ臨時代理大使は、日本が一貫してシリアの人々を支援してきたことへの謝意を述べた上で、二国間の連携強化を望む意向を示したのである。
劇的な体制転換と再建への道
今回の会談の背景には、シリア情勢の劇的な転換がある。日本の約半分の面積を持つシリア・アラブ共和国は、長らくアサド政権による強権的な統治が続いていたが、2024年12月、北西部イドリブを拠点とするシャーム解放機構を中心とした反体制派がダマスカスを制圧し、アサド大統領はロシアへ亡命した。これを受け、アサド政権下の首相から権限の委譲を受けた「シリア救済政府」が暫定政権としての地位を確立し、2025年1月にはアフマド・シャラア氏が暫定大統領に就任した。
新政権は2025年3月までに新体制への移行を実施すると宣言し、国民対話の実施や憲法宣言の裁可を経て、新たな国づくりを進めている最中である。実際に2025年3月には新たな閣僚リストを発表するなど、その道のりは決して簡単なものではないものの、少しずつ、再建に向けてシリアは動き出している。
外交的孤立からの脱却と日本の役割
外交面においても、かつての孤立状態からの脱却が見られる。シャラア大統領は就任後の2025年2月、サウジアラビア、トルコ、ヨルダンを訪問し、首脳会談を実施するなど外交活動を活発化させた。これに呼応するように、欧米諸国や韓国なども関係再構築に動き出し、特に米国においては、トランプ大統領が2025年5月に制裁解除を表明、6月には原則的な解除を指示する大統領令を発出するに至った。日本政府もまた、こうした情勢の変化に鑑み、同年5月30日にアサド政権関係者等に対する資産凍結等の措置の一部解除を閣議了解している。
今回の駐日大使による表敬訪問もその外交的孤立からの脱却の一連の流れに位置づけられるものであり、日本は中東地域において西欧とは異なる独自の地位を占めているため、今回の表敬訪問を契機に日本にしかできない形でシリアの復興に向けて尽力することが期待されるだろう。
復興に向けた経済協力と日本の技術
経済面では、長年の紛争と制裁により、GDPの低迷やインフレ、通貨シリア・ポンドの下落など深刻な状況が続いているが、欧米諸国による制裁の解除に伴い、今後の復興が期待される局面にある。日本はこれまでも有償・無償資金協力や技術協力を行ってきたが、新体制下におけるシリアとの関係は、今回の政務官表敬を経て、新たな段階へと進みつつあると言えるだろう。
日本に関しては特にがれきの撤去技術において世界でも屈指の技術を保持しており、特に復興においては震災などで多くの経験を有することから、シリアに対してもその経験を活かしてその復興をサポートすることができるだろう。近年ではトランプ米政権が国際援助を削減し、西欧諸国も国際援助を減少させている。だからこそ、日本は国際協力においてその存在力を徐々にではあるが増加させており、シリア復興においても主導的な立場に立って、中東地域の安定化に貢献することが米国に代わって期待されていると言える。
参考
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/syria/data.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_03127.html