イギリスのBBCから派生した料理サイト「Good Food」が、ローマ名物のパスタ、カチョ・エ・ペペの材料をアレンジしたレシピを掲載し、「手早く作れるランチ」と紹介したことで、多くのイタリア人や飲食業界団体が強く反発し、遂には在イタリア英国大使館に抗議文が送付される事態になった。
楽しいはずのレシピ談義が国際問題に発展してしまったのはなぜだろうか?
国際問題と化したパスタ
イギリスのBBCから派生した料理サイト「Good Food」(現在はドメインのみBBCからライセンスされている)が、ローマ名物のパスタ、カチョ・エ・ペペの材料を本来の「スパゲッティ+黒こしょう+ペコリーノ」ではなく、パルメザンやバター、生クリームでも良いとするレシピを掲載し、「手早く作れるランチ」と紹介したことで、多くのイタリア人や飲食業界団体が強く反発した。団体はイギリス大使館に公式に抗議申し立てを行い、「Good Food」側にも抗議の手紙を送付。一方「Good Food」側は、これはあくまでイギリスで手に入りやすい材料で家庭向けにアレンジしたものであり、本格レシピを提供してもらえれば掲載したいと釈明している。なお、2025年11月現在、レシピにはバターが明記されている。さらにはこの件を「ネタ」にするような投稿も行っており、どうやら反省するつもりはないようである。
独自アレンジにお怒り
イタリアのシェフや店主たちは、「バターやクリームを使った時点で別の料理であり、カチョ・エ・ペペと名乗るべきではない」と批判し、この激しい反応の背景には食に深く根ざしたイタリアの伝統が「改ざん」されたことへの怒りや悲しみが背景にあると語っている。なお、イタリア料理の独自アレンジが物議を醸すのは今回が初めてではなく、2021年にもニューヨークタイムスに掲載された「スモーキートマトカルボナーラ」が大きな論争を巻き起こした。
日本食のすゝめ
つい先日は、アメリカで電子レンジを使って紅茶を淹れたり、なんと塩を紅茶に投入する様が拡散され、それに対して英国民が半ば呆れの混ざった反応をしていたことが記憶に新しいが、今回はイタリア側の逆鱗にイギリスが触れる結果となった。日本で例えるならば、寿司をバーベキューするようなものだろうか・・・と思ったが、そもそも我が国には炙りサーモンが既に存在するし、時には生きたまま魚を食すことすらある。恐らく、日本人が在日英国大使館に抗議文を送付するような事態は起こらないと考えてよいだろう。Good Foodの編集長には、是非とも日本を訪れて、真のアレンジの何たるかを学んで欲しいものである。
参考
https://www.bbcgoodfood.com/recipes/cacio-e-pepe
https://www.bbc.com/japanese/articles/cp8zylg3v74o
https://www.wantedinrome.com/news/italy-controversy-butter-uk-recipe-cacio-e-pepe.html